部屋に置いてあった空の花瓶に花を挿しながらが聞いてきたのは、向日葵の花言葉。そしてその手に持つ花瓶には明るいオレンジの大輪の花。
……そもそも花にも花言葉にも全く興味はない。知らん、と即答すれば、は少し考えるような仕草を見せた。そして何を思ったのか、ジッと俺を見つめだした。その大きな瞳はハッキリと俺を映し出す。それはまるで己を鏡で見ているかのようで、段々といたたまれなくなってくる。
「……一体何のつもりだ」
「ふふっ、向日葵の花言葉は『私はあなただけを見つめる』なんですよ」
そう言って笑っては俺から視線を外し、気分が良いのか、上機嫌に鼻歌を歌いながら手に持つ花瓶を元の位置に戻した。
……『私はあなただけを見つめる』か。
「……なるほどな。なら、俺以外何も見るな」
「っ……」
背後から手を伸ばし、その手での視界を遮り覆うとそのまま抱きしめる。するとその小さな肩が僅かに跳ね、の顔が赤くなっていくのが手のひらから伝わる熱で十分に分かった。そしての視界を覆う手を退かし、そっと肩を掴みこちらへと向き直させる。恥ずかしそうに俯くの赤く染まる頬を指先でゆっくりとなぞった。そのまま顎へと指を滑らし、親指で顎を持ち上げて動かぬように固定する。
交わる視線の先、潤む瞳の奥に映るのは、俺。
「そうだ、。こうして俺だけをその瞳に映していろ」
「う、ウルキオラ様っ」
「何だ?……俺をからかった貴様が悪い」
「そ、そんなつもりじゃ……っ」
「そんなつもりじゃなければ、なんだ?」
真っ赤に染まる耳に唇を寄せ呟けば、小さな甘い声が聞こえた。それに気分を良くし、耳を舌先でつつく。そして耳の凹凸までもその舌で丹念に舐め上げ、奥に舌を捩じ込み責めていく。
耳たぶへと舌を移動させると、熱を帯びて赤くなったそこをそっと甘噛みした。その柔らかい感触を堪能するように、甘く噛んでは舐めるを繰り返す。
するとは声を抑えようと口元に手を当て、小さな肩を小刻みに震わせる。その姿に愛しさが込み上げ、思わず笑みが零れた。
「う……ウルキオラ様ぁ……い、意地悪ですっ」
甘い吐息交じりに紡がれた小さな訴えに、の耳たぶからゆっくりと唇を離す。
再びに視線を合わせれば、今にも零れ落ちそうな大きな瞳は涙に濡れながらも再び俺を映す。目尻に溜まる雫をそっと親指で拭い、林檎のように真っ赤に染まる頬に唇を寄せて口付けた。
向日葵の花言葉
(20170903)