はじめまして、

昼餉を終えて執務室に戻り本日二度目の演練の編成を練っていると、廊下から床板を軋ませゆっくりと近づいてくる足音。
注意深くその音に耳を澄ませると、丁度この部屋の前で止んだ。

「主、ちょっといいかな?」
「ええ、どうぞ」

襖越しに私に向けられた、優しく柔らかな低音。返答の後、スッと静かに襖が開くと、萌黄の狩衣を纏った長身の男……石切丸の姿。石切丸は後ろ手で襖を閉め、机に書類を広げる私の前に来るとそっと腰を下ろした。

「主、まだ演練の編成を決めている最中かい?支障がないのであれば加えて欲しいのだけれど」
「あら、自分から言ってくるなんて珍しいですね」
「え……そうかい?」

私が審神者に就いて早い段階でこの本丸に顕現した石切丸は、二月程前に練度がその限界値に達した。その次の日から、他の刀剣男士達の育成のため、と私は彼を演練に参加させることはなくなった。
ううん、それを言い訳に私は石切丸を彼女とのささやかな逢瀬に出したくはなかったのだ。
私は知っていた。石切丸の……演練場で会う審神者の彼女を見つめる眼差しが、熱を帯びて甘みのあるものだということを。とても愛しいものを見つめる眼差しで彼女と会話をする……彼は彼女に恋をしていると。
演練に出さなくなってからの彼は溜息が多くなったように思う。ただ一人何も無い空を見上げては、甘く静かな熱を孕んだ紫水晶の瞳を切なげに細めるのだ。恐らく……彼女を思って、だろう。

「私も武器であるからね……こう剣を交えておかないと、いざという時に力不足では困るだろう?」
「……本当にそれだけ、ですか?」
「主……?」

腰から下げた大太刀の柄頭を右手で軽く撫でながら言う石切丸に、つい本音が出てしまった。
きょとんと口を半開きにしてそのままの石切丸に慌てて何でもない、と言うと机に視線を落とし手元の用紙の最後の空欄に石切丸と書き込んだ。

「それでは久しぶりに石切丸にも演練に参加してもらいますね」

カラカラの風、舞う砂埃、土の匂い。
鬨の声、刀剣同士が激しくぶつかり合う音。

久々の演練に石切丸はいきいきとした表情を見せていた。普段の穏やかで優しい雰囲気の彼からは想像ができないほど、活力に満ちていて鋭い顔つき。それは武器である本分を思い出したからなのか、それとも、想いを寄せている彼女に再び会うことが出来るからだろうか……

全ての演練が終わると、皆に手拭いを渡しながら言葉をかけていく。そして石切丸にも渡そうと声をかけようとしたが、目の前の光景に出かかった言葉を飲み込んだ。

「…っ!?」

嬉しそうに微笑む石切丸の姿と、手に持つ手拭いで石切丸の頬を伝う汗をそっと拭う一人の女性の姿。心做しか頬を赤く染め、柔らかい眼差しで彼女を見つめる石切丸。心臓を締め付けられるような苦しさを感じた。

あそこにいるのが私であればいいのに……

ただ二人を眺めていることしか出来ず、手拭いを持つ手の指の先が白くなるまできつく握り締めた。

異空間ゲートをくぐり、演練場から茜色に染まる我が本丸に帰ってきた。夕餉の献立の話をしなが皆玄関へ向かう中、一人異空間ゲートを見つめる姿。石切丸だ。
落日に照らされたその表情は影で覆われ窺い知ることは出来ない。空の茜が彼の萌黄の狩衣を暗い枯草に染め上げ哀愁を漂わせていた。
彼は今何を思っているのだろうか……
胸をチクリと刺す痛みがじわりと広がり全身を包んだ。落日の焼け爛れたような空は私の心情を表しているようで……

燃える空。
どうしたら、この苦しさから逃れることが出来る?
どうしたら……
ふと、一つの考えが脳裏を掠めた。

きっと、もう……
私は戻れない。





湯浴みも夕餉も済ませ、離れにある自室の縁側に静かに腰を落ち着かせる。上を見上げれば濃紺の空に太陽の様な大きな月が輝いていた。

「主、いるかい?」
「中に入ってどうぞ」

ゆるく吹く夜風が障子を小さく震わせる中、襖を叩く声。それに返事をすれば、失礼するよと襖が開き、そして閉まる。その後足袋が畳を滑る音と布が擦れる音が響いた。

「用事と聞いたけれど、どうしたんだい?」
「……」
「……主?」

問いに何も答えない私を石切丸が訝しげに呼ぶ。口内に溜まった唾液をコクリと飲み込むと、震えそうになる声を何とか悟られぬ様にしながら、目の前に浮かぶ月から視線を外すことなく言った。

「……い、石切丸はあの……彼女のこと、好き……ですか?」
「……そうだね」

静かに発せられた石切丸の言葉。凍りつく様なひんやりとした感覚の後、熱い刃を突き立てられた様な苦しさが胸を襲った。

ああ……、そうか。
やはり彼女のことを……

「主が私のことを……その、慕っていることは薄々気がついていたよ」
「っ!?」
「……私は主の手によって顕現された。主を慕いその想いに応え命に従い剣を振るう。そうするものだと、そうしなければならないと思っていたよ。なのに、ただ演練ですれ違うだけの審神者の彼女を目で追い、いつの間にか主とは違う別の感情を抱いてい……」
「そんなこと聞きたくない!」

石切丸の言葉を遮る様に叫び、もうこれ以上は耐えられないと、両の耳を手のひらで塞ぐ。

「私は……貴方が好き」

そう呟き、耳から手を離し床につくと、それを支えにゆっくり立ち上がり部屋に向き直る。部屋の中央あたりに座る石切丸に歩み寄り、向かい合う形で私も座った。

「私は……貴方が……貴方が好きで好きでたまらない!貴方に愛されたくて、貴方に触れたくてっ」

彼は何も答えなかった。けれどダムが決壊したかのように、抑えていたものがとめどなく溢れてくる。これまで築き上げてきたものが音を立てて崩れ落ちていく。
私は何を……

「ねぇ、抱いて」

石切丸の幅広の肩が小さく震えた。
私は一体何を言って…

「主の命令が聞けないの?……私を抱いて、石切丸」

少しの沈黙の後、戸惑いがちに石切丸の腕が伸びてきて、長い指先が私の頬に触れた。氷の様に冷たい指先。そしてゆっくりと端正な顔があと少しの距離まで近づいてきた。石切丸の栗色をした絹糸の様な髪が頬を撫で、熱のこもった吐息が鼻にかかる。そして形の良い唇が薄らと開いたかと思うと、唇が柔らかい感触に襲われる。乾いた互いの唇。石切丸の生暖かい舌が私の唇をひと舐めすると、その舌で唇を割り口内を犯す。

「んっ……」

舌を絡め、クチュと淫らな音を立てながら互いの唾液が混ざり合う。口に収まりきらない混ざりあった唾液は、顎を伝い落ちて畳にシミを作った。頬に添えてあった石切丸の指先が顎まで滑り捉えると、様々な角度から攻め立てられ、あまりの激しさに甘い吐息が洩れる。息継ぎをするタイミングを逃し、息苦しさを主張するように石切丸の胸を叩くと、彼はゆっくりと唇を離す。私たちの間には名残惜しそうに銀の糸が引き、そして切れた。
シュル、と音を立て梔子の大きな帯を解いた石切丸は、袴と着物を脱ぐとそれを無造作に畳の上に放り捨てる。そして肩で息をしながら呼吸を整えていた私の腕を掴み、そのまま引き寄せ放った着物の上に組み敷いた。
月灯りを背にした石切丸の表情は逆光の所為ではっきりしなかったが、私を掴む骨張った大きな手は頼りなさげに僅かに震えてる様な気がした。

「主…やはり止めよう」
「命令…です、石切丸」

空いてる方の手で彼の襦袢をはだけさせ、立派な逞しい胸を軽く爪を立てながらなぞると、ピクリと肩を震わせた。

「主…」

石切丸は何か言いかけた唇を閉ざし、思案するよう目を伏せる。
そっと……私の浴衣の帯に伸ばされた長い指先。伏せた目を開けた石切丸は帯の蝶結びの端を摘むと、そのまま引っ張り帯を解いた。

浴衣がはだけ外気に肌が曝され、思わず身震いする。曝された女性特有の膨らみを石切丸の大きな手のひらが優しく包み、外気に触れ固くなった突起は生温かな舌に絡めとられた。

「んんっ……」

右の突起を舌で踊らされ、左の膨らみを優しく揉みしだかれ身体の奥が疼く。私の右手は更なる快感を求めるように石切丸の下半身に伸び、襦袢をかき分ける。中心にある男性の膨らんだそれを下帯の上からそっと撫でると、彼の身体が大きく跳ねた。

「っ……あ、るじ」

喉から絞り出すような石切丸の切ない声。それを聞いて、邪魔な下帯を剥ぎ取ると、その太く雄々しい彼の雄に直に触れた。

「っ……」

苦しげな吐息と共にそれは大きく脈打ち、その先端から透明な液を僅かにだが吐き出す。それに気分を良くして撫で続けると、石切丸は私の手を取り自身の雄から離し遠ざけた。そして私の足の付け根まで下がると、湿ってその意味を成さなくなった下着を取り去る。身を隠していたものを取り払われ彼を求め疼く中心からは、トロリ……と何かが溢れ出し太股を伝い落ちた気がした。

目の前の石切丸が視界から消えると、彼の生温かい舌が中心の割れ目をなぞり、赤く腫れぼったくなっているであろう蕾を舌先で啄かれる。

「くぅ……んあっ!」

突然全身を駆け巡った、あまりにも強く甘い電流に思わず身体を仰け反らせた。ふやけた蜜壷は彼の骨張った男の指を容易く受け入れ、その指で肉壁を擦り与えられる甘い刺激は、矢継ぎ早に私を攻め立て快楽の波に落とそうとする。

「もうっだ、め……早く石切丸が……」

欲しい。
貴方が欲しくてたまらないこの身体を、今すぐに満たして欲しかった。

「……本当にいいのかい……主」
「ん……はやくっ」

躊躇う石切丸にせがむ様に身体を軽く捩ればプチュッ、と卑猥な音を立て蜜壷からゆっくりと骨太な指を引き抜いた。そして腰紐を解き襦袢を畳に落とすと、姿を露にしたのは鍛え抜かれた逞しくも美しい四肢。前屈みになり、はちきれんばかりに雄々しく聳り立つ雄をトロトロにふやけ濡れそぼった蜜壷にあてがうと、数回割れ目を往復して一気に私の身体を貫いた。

ずっと待ち望んでいたもの……しかし指とはまるで比べ物にならないくらいの質量に、処女ではないといえどもあまりの苦しさに叫ばずにはいられなかった。

「んあああああっ!!!」
「っ……あ、るじっ……力を、抜いてくれないかなっ……」

石切丸に耳元で熱い吐息と共に苦しげな声音で囁かれる。苦しい中でもそれは甘い刺激となり、気をとられ力が抜けた隙に、石切丸は自身の雄を更に推し進めた。

「はあああっ……!」

メリッと音を立て石切丸の雄が私の中に全て収まると、その形を覚え込もうと中が収縮し始める。

この行為がお互いを想い慈しみあった先のものであったのなら、どれだけ幸せだっただろうか。
貴方の心を奪い去った彼女が消えてなくなってしまえばいいのに。
貴方の望む愛が癒せないくらい私を刻みつけられたら、と……
思い願うのはそんなことばかり……

「っ……ふっ……」

石切丸が切なげに細く甘い息を吐く。額に玉のような汗を浮かべ、何かに耐えるように眉を顰める彼の姿はとても情欲的だった。

「ひやぁっっ!」

石切丸がゆっくりと腰を引き動き出した。とても緩慢な動作だったが、十分過ぎる質量を持った雄が肉壁を擦る感覚は眩暈がするくらい甘美なものだった。
けれども慣れというものは恐ろしいもので、慣れてくるとそれに物足りなく感じ、もっと欲しいと強請るようにはしたなくも自ら腰を浮かせてしまう。それに気がついたのかどうかは分からないが、石切丸は徐々に打ち付ける腰を速めていった。中をかき混ぜられ、抉るように擦られ、猛然と穿たれ…石切丸から与えられる甘い刺激を無我夢中で貪る。
もっと……その先を欲する私は、身体の中心の更にその奥まで石切丸の雄を飲み込もうと、縋り付く様に必死に彼の腰に自分の足を絡めた。

「し……きりっまる!も、もう……わた、しっ」

段々と自分の限界を感じて声を上げると、石切丸は私のイイところをここぞとばかりに執拗に攻め立てた。全身の血が凄い勢いで駆け巡り、目の前に白がちらついてきたところで雄を蜜壷ギリギリまで引き抜かれる。達する寸前で突然止んだ抽送に石切丸を見上げると、一気に最奥を突かれ咄嗟に彼の腕を鷲掴んだ。

「ゃあっ……ああああっ!」

途方もない快楽の波が私を襲い、そして飲み込んだ。全身に強い電流が流れたみたいに身体が小刻みに跳ね、目の前はチカチカと眩む。全てがどうでも良く頭の中が真っ白になる様な甘い快感の中、遠くで石切丸が小さく呻くと、彼の雄が一際膨張し、子宮口を熱いものが勢いよく叩いた。それが数度繰り返され、その感覚に打ち震えながら、中をこれ以上なんてないくらいに彼の雄と体液で満たされる。
同時に彼の記憶や想いが流れ込んできた。それはとても小さく断片的で、よく分からないものだったがただ一つ……鮮明に見えたものがある。

それは……
石切丸と共に笑う彼女の姿だった……

息も絶え絶えに石切丸を見上げると、彼と視線が合う。けれども、私を見ているはずの紫水晶は私を映してはいなかった。
光のない鈍い紫水晶はどこか遠くを見ていて……

元々彼の瞳には私など映ってはいなかった。
先程の行為の中でさえも。

「や、はり……石切丸、貴方は……」

両手を月灯りを受け青白く染まる彼の頬に伸ばす。そのまま滑らすようにその太くがっちりした首に添えた。石切丸は一切抵抗する様子もなく、むしろ私の手を大きな手のひらで包むように添え、静かに微笑む。彼が見せる苦さを混ぜた恐ろしいほど綺麗な笑顔は、身体を震わせた。

「っああ……それで、いいよ主」
「っ……!」
「それがいい……」

小さく呟いた石切丸の声に応えるかのように無数の線香花火の様な光が宙を舞う。淡い光となって徐々に消えていく石切丸を通して薄らと見える天井。口元は笑みを浮かべているのに、相反する瞳。光を受けて様々な色を見せ輝いていたあの愛しい紫水晶の双眸は、光を失い黒くくすんだ滅紫に染まり消えていった。
自分の両手は対象を無くし、重力に従い畳へ引き寄せられる。

「ぁ……わ、たしは、何を……」

私は、彼を……
石切丸を……

刀解、した。

情事のあとの愛液と精液の鼻を突くような臭いに混じって仄かに白檀の香り。私は咄嗟に石切丸の残り香を漂わせる萌黄の着物を手繰り寄せ抱き締めた。それは彼が確かにここにいたと証明するもの。

私が望んだことはこんなことだろうか。
私が夢見た、思い描いた世界はこんなものだっただろうか。

それがどんなものかだったなんて、もう思い出せない。そんなもの、重く淀んだ感情で真っ黒に塗りつぶされてしまった。瞳に溜まった火の様に熱いものが世界を滲ませる。

私はそれから逃れる様にそっと瞼を閉じた。





夜明けを迎える青みがかった空の中、身体のだるさと酷い喉の乾きを感じて目を覚ます。よろよろとふらつきながら立ち上がると、太股に何かが伝い、そして落ちた。
昨日の情事の名残……
溢れ出しそうになる目頭に溜まる熱いものを何とか堪え、身なりを整え上を羽織り、部屋を出て厨に向かう。
暗い廊下に厨から零れる明かり。覗くと、本丸の料理番でもある燭台切が朝餉の準備をしている最中だった。誰かに会う気になれなくて、そっとその場を立ち去ろうと踵を返すが、それは燭台切の声によって止められる。

「……誰かいるのかい?」
「あ、おはよ……う」
「おはよう主、早いね。あ、これね作りすぎちゃって……あはは、僕寝ぼけてるのかなぁ」

厨の中央にある作業台にはきんぴらごぼうの小鉢が並んでいた。しかし、一つだけポツンと端に寄せられている小鉢があった。石切丸の……燭台切は無意識に彼の分を作ってしまったのだろう。
刀剣が破壊または刀解された時、刀剣を顕現した審神者以外はその刀剣男士の記憶を失くすはずだから。彼らに石切丸の記憶はもうない。

そう、ここに石切丸はもういない。

「そんな事より主、目が赤くて腫れぼったいけど、どうしたの?」
「そ、そうかな……目が痒くて擦りすぎちゃった……のかも」

心配そうに顔を覗き込もうとする燭台切から慌てて顔を逸らす。すると、燭台切の……冷水を扱い冷えたのだろう大きな手に頬を撫でられ、思わずピクリと身体が揺れる。
似ていた。

昨日の石切丸の氷の様な冷たい指先に。

「あ、ごめん……冷たかったかな。主、後で薬研に看てもらうかい?」
「ううん、大丈夫。大丈夫……だから」

まるで自分に言い聞かせるかのように燭台切にそう言うと、逃げるように厨を出て離れの自室に向かった。また目頭が燃えるように熱くなって、溜まりきり行き場を失った涙が一気に溢れ出す。

愛する人と肌を重ねたぬくもりも、初めて刀剣を刀解した感覚も、薄れることなく強くこの身体に残っている。そして、彼を求めるこの心も。この現世に顕現し彼らに人の身を与えた審神者である私は、その記憶を失くすことは赦されない。
これは罰。
行き過ぎた想いを抱き、苦しみから逃れようと愚かな行いをした、罪。






あれから数日が経った。あの日以前と何も変わらない日々。ただ一つ、石切丸がいないことを除いて。
そして今日もいつもと同じように日々の任務の一つである鍛刀を行った。資源と依頼札を小さな職人に預け、ふと、釜の中で燃え盛る炎に視線を向ける。すると、強くドクンと胸が脈打ち胸騒ぎを感じた。言い知れぬ予感に、震える手で手伝い札を懐から取り出すと、目の前で忙しなく動いている小さな職人に渡す。
数十秒後、代わりに手渡されたのは見覚えのある刀だった。

大太刀である長い刀身を納める純白の鞘。
黄金に輝く鍔。
深紫の下緒。

恐る恐るそれに触れると、桜の花弁が乱れる様に舞った。
あの時と同じ光景。初めて彼を顕現した時と同じ。仄かに香る覚えのある香。光に包まれて姿を現したのは、冠と萌黄の狩衣を身にまとい、大太刀を振るうに相応しい体躯の紫水晶の瞳を持った彼。

そして紅で目尻を縁どる瞳を細め微笑むと、温かな優しい低音を響かせた。

「石切丸という」



はじめまして、

(二振目の……貴方)


(20160811)