突発夢01

「瀬人、幼馴染やめたいんだけど」
「……は?」

幼馴染をやめる……だと?
あまりにも突拍子のない発言に、思わず間の抜けた声を上げた口を慌てて塞ぐ。そもそも、幼馴染とは『やめる』ことが出来るものなのか?それとも…絶縁、ということか?
一瞬頭を過ぎった不穏な文字に声が低くなる。

「……どういう事だ?」
「えっと……そのまんまの意味」
「それでは分からん」
「だーかーらー!そのままの意味なんだって!」

一向に前に進まない会話。
しかし、そのままの意味、と言う目の前の幼馴染の頬はどこかほんのりと赤く染まっていた。……何故頬を赤らめる?この幼馴染が何が言いたいのか余計分からなくなった。

「貴様、熱でもあるのか?」
「せ、瀬人の馬鹿!もう知らない」
「なっ……」

頬を赤くしてるものだから熱でもあるのかと心配すれば、そんな返事が返ってくる。……一体なんだというのだ。
そして暫く続く沈黙。
しかし沈黙を破ったのはこいつの方だった。ゆっくりとその唇を開くと震える声で言葉を紡ぎだした。

「……だから、その……もっと特別な関係に……」

そこで言葉を切ると大きな瞳を潤ませて目尻から頬へ一筋の雫を零した。

「っ……」

突然そんな姿を目の前で見せられ、たじろぐ。

……幼馴染をやめる。
もっと特別な関係……特別。
漸くこの幼馴染が言いたいことが分かった気がした。いや、恐らく、だが。



「おい、泣くな……」
「だって……せ、瀬人がっ……」
「……悪かった」

……オレはこいつの事が好きだった。
だが幼馴染という関係から抜け出すことが怖かったのだ。もしこいつがオレと同じ気持ちでなかったらと考えると、こいつと一緒にいられるのならば幼馴染のままでいた方がいいのでは、と。
ふん……オレらしくない。

「こっちを向け」

流す涙を隠すように俯くこいつの顎に手を添え、上を向かせる。そして指先で目尻に溜まる雫をそっと拭った。

「瀬人、私っ……」
「あぁ。オレから言わせてくれ。……好きだ。オレの傍に居ろ。この先ずっとな」






(20170927)